合宿での食事というと、どんな食事を思い浮かべますか?
僕の場合、冷めたハンバーグやらエビフライやら御馴染みのオカズがプレートに並んでいる絵を想像しちゃいます。
あったかいおかずが提供される事なんてほとんどありませんでした。合宿飯でほかほかと湯気の立つおかずが提供されるなんて、冬季オリンピックに南半球の選手がメダルを獲得するくらい、珍しい出来事ですよね
ある程度まとまった数をすでにテーブルの上に配膳しなければならないので、畢竟冷めた状態でお客様の下に提供されます。これはもう各種合宿での食事の宿命であって、出来立てを提供するのは時間的、物理的に難しい物があるのです。
どんなに美味しく焼き上げた肉や魚も時間がたてば硬くなってしまうのは当然の事。苦心して考案したメニューを一番美味しいタイミングで食べてもらえないのは、いつも非常にもどかしい所なのです。悩み、苦心しついには抜け毛が増えてしまいそうなんです。
特に雪国での春、冬の合宿なんかでは寒いですので、すぐにおかずが冷めてしまいますし、暖房をけちっている所なんかはもはや冷めてるを通り越して冷え切ってしまい、知覚過敏の歯に激烈なアタックをかけて来るような、付け合せのバナナで釘が打ててしまいそうなところもありますよね?僕は遭遇したことはありませんが。
そんな中で鍋や陶板など、その場で火をかけながら食べることが出来るメニューは心強い味方になってくれるのです。
外は雪、練習で疲れた体を合宿中は家族のように過ごす仲間たちと囲む、あったかい鍋は身も心もあっためてくれます。食卓のヒーローです。大雪に閉ざされ、凍結した道に誰も外に出られない様な時でも、軽々と真紅に染められた軽トラで石油タンクに石油を注ぎにきてくれる村のヒーロー、北進ガス様の様です。
ヒューマン・ガス様ではないですよ。
偉大なるヒューマン・ガス様。
そんな今年の鍋、塩麹で仕込んだ鶏肉とキャベツの豆乳鍋にしました。
先代のオーナーでもある親父は乳製品も豆乳も一くくりに大嫌い。ついでに言うとニンジンもごぼうも大嫌い。絶対にメニューに組み込みませんが、僕は大の豆乳好き。厨房の主権を握った今年、強引にメニューに組み込んでしまいました。
塩麹で前日から仕込んである鶏は皮目だけ焼き目をつけて香ばしさと風味がUP。口の中でほろほろと崩れます。甘くとろとろになったキャベツと一緒に豆乳だしでほおばると、んんん、ん、んん、んんんんん、これはもう箸を使うのもわずらわしい、手づかみで食べたくなる美味しさ。気をつけてください。絶対にやけどしますから。
学生たちが鶏肉を奪い合い、壮絶な仲たがいが始まる絵が頭に浮かびます。
楽しいはずの合宿が、煮えたぎる鍋汁を飛ばしあう阿鼻叫喚の生き地獄へと展開される様を楽しみにしながら、皆様のお越しをお待ちしております。