やたらと飯に力を入れる宿、ちきちきばんばん。メニューを考えるときの基本的なコンセプトはずばり、「いかに米が喰えるか」
親父の代からこの単純明快なコンセプトの元、仏教六道餓鬼界の亡者のような食欲旺盛の学生たち(失礼)の乾いた胃袋を満たすべく、手を変え品を変えさまざまなメニューを考案しながら30余年をすごして来たわけでございます。
やれサバ味噌、秋刀魚の蒲焼、豚のみそ焼き、チキンの照り焼き、マグロのぶつ切り、アジフライ・・・etc
うむ。確かに飯が進みそう。献立をみるだけで胃袋が渇く。胃袋の渇きを米で潤したくなる。米をくれ、俺の乾いた胃袋をお前の洪水のような白い飯粒で洗い流してくれ。そんな声が聞こえてきます。
結局、われわれ日本人はしょうゆの効いた塩辛い味だったりとか、甘辛いタレの絡んだ赤褐色の魚や肉で米を流し込むのが大好きな訳です。
そんなメニューたちを尊敬を込めて「意識低い系」と呼び、おかずを見ると米が恋しくなる。米を食べるとおかずがほしくなる。そんな無限ループにどっぷりとはまっていくわけであります。が。
たまにはちょっとお洒落な料理も作りたくなるのがオトコの純情とでも申しましょうか。
そんなこんなで数年かけて構想し、材料を吟味し、手順を考え、数々の試作品の屍の果てにやっと今年、このメニューが日の目を見るに至ったわけであります。
牛スネ肉の赤ワイン煮込み
ちなみに僕はお酒はまったく飲めません。
色々なメーカーのすね肉を取り寄せては圧力鍋で煮込み、やっとたどり着いた逸品です。高価な肉ではありませんが、手間をかけて煮込み、味を調え寝かせ、時間をかけることでどんな高価な肉よりも美味しい一皿が仕上がりました。盛り付けはまだまだ改良の余地ありですが。
勿論、米が進むように味を意識低い感じに調整してありますので、洋風ですがご飯のおかずにぴったりだと思います。
ゼラチン質を豊富に含んだ肉は偏執的なまでに煮込まれ、とろとろ。ってゆうかとろっとろ。ほぐれる赤身、唇を撫ぜるゼラチン質のプルプルした食感、牛の脂の旨み。三位が渾然一体となって貴方の胃袋を刺激します。
という訳でまた一つ、ちきばんにいい感じで意識の低い(ほめ言葉)メニューが誕生したわけであります