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某大学ダンス部合宿記 其の一
二十五年前にダンスフロアーの有るダンスの出来る宿を建てようと思った時に、大学のダンス部の
合宿を頭に置いて計画を立てて建築をしたと、前に書いたのだが、実際に大学のダンス部が、来て少し、
予想してた事と違う事があった。それは、ダンスは、芸術か、スポーツか、だった。

文部省の認定を執る為にとか風営法を外す為とか出なく、純粋にダンスは芸術かスポーツか?
ダンス教師の頃、もしそう問われれば、私なら芸術、体によるアーチスト(表現者)と、答えたろう。
所がである、予想しなかった事に大学ダンス部は体育会に、所属するスポーツクラブだった。

大学によって舞踏研究会、もしくは競技ダンス部となっているが、所属は体育会系である。
そして更に、国公立大よりも私立大は、教育の一環としてが其れに加わる。
では本文に入ろう、某体育会系色の強い、某私立大学ダンス部の、お話です

八月の或る日、某大学ダンス部が飯山駅に到着した。初めての大学である、無理も無い話で、
此の某大学は、絶対に四年間は同じ宿には行かない、早く言えば、同じ所では合宿はしないのである、、
理由は段々に書きます。全員で一週間お世話になりますと挨拶が終わり、解散の声が出るやいなや
一斉に皆、駅前の電話に飛びつき、家に到着の連絡を入れ始めた。


後で聞いた話では、ダンス部全員宿に到着するまで、幹部の学生以外は、何処に合宿に行くか
知らされず来たので、部員は家の人に「一週間合宿に行きます」としか、言って無かったらしい。
部員に、合宿地を、秘密に、してあるのは、場所も知らせず人里離れた所に連れてってしまえば
交通手段もわからず、帰るに帰れず脱走も出来ないのでその為らしい、

脱走防止策をしてからの合宿って、凄いですネー 更に徹底していて、合宿中は、私の宿での
寝所は二階なのですが、二ヶ所ある階下へ行く為の階段の前に、四年生が、一人ずつ寝ずの番を、
して絶対に階下には行かせません。そんな訳で脱走は不可能です。

合宿が、始まりました。夏合宿の目標は、“全日本選手権の、ファイナルまで、踊れる体力養成”
ダンスの技術習得では、無く“体力養成” そうです、正にスポーツなのです。
最初に合宿前に電話で、「グランドと大きな薬缶を手配してください」と、連絡が来た時、私は思わず
「体育館でなくグランドですか?お水でしたら、氷を入れてウオータークウラーを用意しますけど」
「否 グランドです、そして大きな薬缶です」 そして、合宿が始まり予想外の事が起きるのです。

朝の柔軟と体操はどの大学でも遣りますので別に珍しくありません、朝食が済んで練習です
皆ダンスシュウズではなく、外でランニングシュウズです。3・5キロ離れた麓の小学校のグランドまで
ランニングして行き、午前中いっぱいグランドで柔軟、ダッシュ、ランニングを、繰り返して、
昼食に間に合う様山道の登り坂を、ランニングで帰ってきます。

昼食の休憩後、午後の練習も小学校のグランドです。ダンスは、夕食後に全体練習のみです。
そう、あの大きな薬缶を、忘れてました。あれは、水を飲む為では無かったのです、テレビで
見た事ありませんか?ラクビーで倒れた選手に薬缶で、掛ける“魔法の力水”あれです、
ヘタリ込んで倒れた部員に水を掛ける為の薬缶だったのです。

正に体力養成の為の合宿で、脱走出来ないように行く先も知らせずに連れて来て、
来てからも四年生が脱走防止の寝ずの番をする程の合宿です。
スポ根以外の何物でも有りません。私などは、見ていて、内心“体力養成”より踊りを教える方が
良いのではと思ったのだが、この年、寝ずの番をしていた四年生のN君は、
全日本戦のラテン種目で優勝して、卒業後プロになって今はラテンのA級選手で活躍している。
陸上部のような合宿ですが、ファイナルまで踊る体力養成の目的は、達成したのでしょう。
ダンスは、芸術 それとも スポーツ?